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人工血管(大動脈疾患)は、外見上健康な人と変わらないため、理解されにくく、何かと誤解されやすいのですが、実際は、命の危険と背中合わせで、大変な思いをされておられると思います。そんなあなたに、活用していただきたいのが障害年金です。
心疾患で障害年金を受給している人はたくさんいます。「自分も障害年金を申請できるだろうか…?」と思いつつ、なかなか申請できない人もいるでしょう。条件や判定基準を知ることで自分が該当するかどうかの判断材料になります。今回は、人工血管で障害年金を申請するための条件や判定基準など詳しく解説します。
人工血管(大動脈疾患)とは
大動脈瘤(大動脈にコブができる病気)や大動脈解離(血管の内膜が裂けて剥がれる病気)の治療で、患部の血管を人工血管に置き換える手術のことを人工血管置換術といいます。
大動脈解離
大動脈の内膜が亀裂して中腹が裂けてゆく病気です。大動脈の壁であった部分に血液が流れ込むことで大動脈内に二つの通り道ができる状態を言います。
ほとんどの大動脈解離は、高血圧によって動脈の壁が劣化することが原因で発生します。
一般的には、耐えがたい激痛が突然胸部に起こりますが、背中の肩甲骨の間に痛みが生じることもあります。
通常は血圧を下げる薬を投与するとともに、外科手術を行って裂けた部分を修復するか、ステントグラフトを挿入して裂け目を覆います。
大動脈瘤
大動脈が“こぶ”のように病的にふくらんだ状態を指します。
大動脈瘤の破裂する危険性が高くなると、大動脈瘤を人工血管に置き換える手術やステントグラフト内挿術を行います。
人工血管を装着している方は原則3級に該当しますので、障害年金を申請できる方は必ず行うようにすることをお勧めします。
障害年金とは
障害年金は、病気やケガによって生活や仕事に支障をきたす場合に支給される公的な年金制度です。障害年金は、国民年金と厚生年金の2種類があり、それぞれ支給条件や金額が異なります。
障害年金の種類と受給要件
障害基礎年金:国民年金に加入している全ての人が対象で、1級と2級に該当する障害状態にある場合に支給されます。
障害厚生年金:厚生年金に加入している人が対象で、1級から3級までの障害状態に応じて支給されます。
障害年金の受け取れる金額はこちら
障害年金を申請するための大切な2つの条件
障害年金を申請するためには大切な2つの条件があります。それぞれ見てみましょう。
初診日に年金に加入している
発達障害で病院を受診した時に、国民年金か厚生年金のいずれかに加入している必要があります。「受診状況等証明書」という書類があり、初診日がいつでどの病院を受診したかを証明しなければなりません。
保険料を納付している
初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合委員機関を含む)と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上である必要があります。20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、この条件は不要となります。
これは簡単に言うと、国民年金の場合は保険料をしっかり納めていないと障害年金を申請できないということを意味しています。
いずれの条件も満たしている必要がある
「初診日に年金に加入している」、「保険料を納付している」という2つの条件は必ず満たしている必要があります。例えば、発達障害で他の人からの多くのサポートが必要でも、この2つの条件を満たしていないと、障害年金は申請できません。
人工血管(大動脈疾患)の認定基準
人工血管(大動脈疾患)で障害年金を受給するためには、障害認定基準に基づいて評価されます。心疾患の障害認定基準は、以下のように定められています。
認定基準の詳細と等級
大動脈疾患の障害の程度は、3級のみです。
程度 | 障害の状態 |
3級 | 胸部大動脈解離(Stanford 分類A型・B型)や胸部大動脈瘤により、人工血管を挿入し、かつ、一般状態区分表のイ又はウに該当するもの 胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤に、難治性の高血圧を合併したもの |
人工血管(大動脈疾患)で障害年金を受け取るポイント
心疾患で障害年金を受け取るためには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。
診断書の準備
医師の診断書は、障害年金の申請において非常に重要な役割を果たします。診断書には、病状や治療内容、日常生活への影響などを詳しく記載してもらいましょう。
初診日の確認
障害年金の申請には初診日が重要です。初診日は、障害の原因となった病気について初めて医師の診療を受けた日とされます。
申請書類の準備
申請書類には、年金手帳、診断書、病歴・就労状況等申立書などが必要です。これらの書類を正確に準備し、提出しましょう。
年金手帳
年金番号を確認するために必要です。
診断書
医師による詳細な診断書が必要です。
受診状況等証明書
初診日を証明するために必要となる書類です。
病歴・就労状況等申立書
病歴や現在の就労状況について記載します。
その他必要書類
住民票、収入証明書など、場合によっては追加で必要になる書類があります。
詳しくはこちら
障害年金の手続きの流れ
障害年金を申請するときは一般的に下記の流れを取ります。
1.初診日を確定する
2.保険料の納付要件を満たしているか確認する
3.受診状況等証明書を取得する
4.医師に診断書を作成してもらう
5.病歴・就労状況等申立書を作成する
6.申請に必要な書類(戸籍謄本や通帳のコピーなど)を揃える
7.年金事務所か市区町村役場(または役所)に提出する
申請にあたっての注意点
対象傷病が限定されている
対象傷病は胸部大動脈解離(Stanford 分類A型・B型)や胸部大動脈瘤のみです。
その他の傷病で人工血管に置換しても対象にはなりません。
厚生年金への加入が必要
人工血管置換の場合、障害等級は3級ですので、初診日は厚生年金加入中でなければなりません。
障害年金認定日に注意
人工血管で障害年金を申請する場合は、手術で装着した日が初診日から起算して1年 6 月より前であれば、その装着日が障害認定日になります。
通常、障害年金は初診日から1年6ヵ月を経過した後、申請が可能となりますが、人工血管は一度装着してしまえば、取り出す(障害の状態が変化する)ことがないため、1年6ヵ月の経過を待たずに、装着日に申請が行えるようになるのです。
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